慢性胃炎、ヘリコバクター・ピロリ菌感染症
慢性胃炎、ヘリコバクター・ピロリ菌感染症
慢性胃炎は厳密的には病理学的概念であり、ヘリコバクター・ピロリ菌感染などを背景に、胃の慢性炎症細胞の浸潤や粘膜の萎縮を伴うものです。正確には萎縮性胃炎と言うのが正しいのですが、一般の方には萎縮性胃炎=慢性胃炎と理解していただいて構いません(以下慢性胃炎と言います)。慢性胃炎に症状は必ず出るわけではありませんが、胃の痛み、腹部不快感、胃もたれ、食欲低下などの原因になることがあります。
胃カメラを行い、胃粘膜に発赤、粘液付着、粘膜の菲薄化、血管透見像などがあるかでわかります。慢性胃炎の原因としてピロリ菌感染があるかを、血液検査(血清抗体価の測定)、組織検査(迅速ウレアーゼ試験)、呼吸検査(13C尿素呼気検査)で行います。当院では前述全ての検査を行っていますので、患者様の病態にあった診断方法をご提案いたします。
ピロリ菌除菌治療を行います。酸分泌抑制薬と抗菌剤2剤を1週間内服していただきます。ペニシリン系抗菌剤を使用しますので、過去にペニシリン系抗菌剤でアレルギーが出た患者様は注意が必要です(診察時に確認し、処方をアレンジします)。そのほか、除菌治療薬による副作用として、下痢、口の苦味、肝臓や腎臓の障害などが挙げられます。
除菌成功率は約90%と良好ですが、保険で認められた回数でも除菌できなかった場合には個別に対応できることがありますので、ご相談ください。
一般的には、除菌中は禁酒が良いと思われていますが、専門的な見地からしますと、一次除菌と二次除菌によって答えは変わります。日本ヘリコバクター学会のガイドライン(2013年版)では、一次除菌では「アルコール摂取は除菌に関係しない」と明記されています(かといって大量飲酒は控えてください)。一方、二次除菌治療に関しては、使用するメトロニダゾールにアルコールの分解酵素であるアルデヒド脱水素酵素への阻害剤作用があるため、「禁酒指導は徹底させる必要がある」としています。
医師の中でも色々な意見はありますが、発がん予防の観点から患者様が望む限り、積極的な除菌が必要と考えています。また除菌すると、一時的に胃酸分泌が増えますので、逆流性食道炎を起こす方がいらっしゃいます。幸い、逆流性食道炎は酸分泌抑制薬でコントロールできますので問題にはなりません。除菌薬内服による副作用などに不安がある方は診察時に充分な説明をさせていただきます。
胃の出口付近の粘膜が、いわゆる鳥肌のようにぶつぶつに見えるタイプの胃炎です。これもピロリ菌が原因であり、比較的若年の女性に見られることが多いです。鳥肌胃炎は胃がんの高リスクであり、かつ若年発症しますので、必ず除菌治療が必要です。このため当院では、若い年齢での胃カメラとピロリ菌診断を強くお勧めしています。