特殊なげっぷ:supragastric belching
特殊なげっぷ:supragastric belching
げっぷは日常生活においてよく経験する症状であり、空気を口腔内から排出する現象です。
食後に数回のげっぷをすることは日常茶飯事であり、それくらいであれば、こっそり隠れてげっぷをしたり、原因の回避(早食い、過食、高脂肪食や炭酸飲料の摂取など)をすれば問題なることは多くないと思います。しかし、患者様の中には食事に気をつけていても、1日に数十回から数百回のげっぷを吐出し、生活に困っている方もおられます。
げっぷには2種類あり、胃内の空気を排出するgastric belching(GB)と、食道内の空気を排出するsupragastric belching(SBG)があります。ここでは前者を「胃型げっぷ」、後者を「食道型げっぷ」と呼ぶことにします。
ほとんどのげっぷは「胃型げっぷ」です。これは胃内に食べ物や飲み物(特に炭酸飲料)が入ることで、胃内圧が高まり、胃内圧が過剰に高くなると、食道と胃の接合部が弛緩する現象が起き(一過性下部食道括約筋弛緩)、胃内に溜まった空気を一気に口から排出することで起きます。一過性食道括約筋弛緩の時に胃酸が逆流すると逆流性食道炎が起きます。すなわち「胃型げっぷ」は食事や胃の働きに関連しますので、食生活に気をつけたり、胃酸分泌抑制薬や胃運動改善薬を使用することで、症状をコントロールできることが多いです。
一方、「食道型げっぷ」は、げっぷの回数が極端に多く、また食事に関係せず、人前でもげっぷが出続けるために人前に出れないなど、生活の質を著しく低下させます。
「食道型げっぷ」の直接の原因は不明でありますが、横隔膜の異常収縮が要因と考えられています。横隔膜の異常収縮と同時に上部食道括約筋(喉の筋肉)の弛緩が起こると、喉あたりの空気が食道に引き込まれ、それが即時に口腔内に排出されることでげっぷが生じます。そのため、少量の空気が頻回に連続して排出されるのが特徴です。
会話中はげっぷが出ないが、会話をやめた途端にげっぷが頻回に見られたり、睡眠中はげっぷが全く出ないなどの特徴的な症状があれば、問診だけでも診断は可能です。しかし、確定診断には高解像度内圧測定や食道インピーダンス測定など専門的な検査が必要になります。治療は薬物治療や腹式呼吸の習得、認知行動療法などがあります。
消化器専門医でも「食道型げっぷ」の認知度は高くないため、げっぷ症状に対して漫然と胃薬を投与している場合が少なくありません。
治療抵抗性のげっぷの場合、「食道型げっぷ」を念頭においた診察が必要です(山下は中津病院勤務時代に、食道内圧検査と食道インピーダンス検査を多く行い、SGBの治療経験もありますので、お気軽にご相談ください)。