胃がん
胃がん
胃粘膜の上皮がなんらかの原因でがん細胞になり増殖を繰り返す病気です。ピロリ菌感染により、萎縮性胃炎、腸上皮化生を経て胃がんになることが多いとされています。除菌治療により胃がんは減少してきていますが、近年は除菌後胃がんの発生が注目されており、除菌治療をされた後でも油断せずに、定期的な内視鏡検査が望まれます。
初期の胃がんは自覚症状がほとんどなく、進行してくると腹痛、吐き気、食欲減退、嘔吐、体重減少などの症状が現れます。
がん細胞が粘膜だけに留まる状態であれば、条件によっては内視鏡治療で根治を目指すことができます。近年は内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が主流になっており、比較的大きながんでも内視鏡で切除が可能になっています。一方で、粘膜下層や筋層に浸潤したがんや、組織学的に悪性度が高いタイプのがんでは外科的な治療が必要になります。
当院では大阪大学附属病院や大阪国際がんセンターなどのハイボリュームセンターと綿密な連携をとり、患者様のご紹介をしています。さらに、両施設が主催する勉強会には定期的に出席して意見交換をし、知識のアップデートもしています。(下線も削除してください)患者様の病状に応じて最適な施設にご紹介させていただきます。
根治後も引き続き当院での鎮静下内視鏡検査、腹部超音波検査、腫瘍マーカー測定で厳重な経過観察を行います。近隣の主要病院とはがん診療連携を締結しており、術後は相互での診療を行っています。
ピロリ菌陽性の方でしたら、治療後にピロリ除菌を行います。除菌をすることによって、二次がんの発現リスクが1/3に減少します。
胃がん予防として、野菜摂取、ビタミンC(抗酸化作用)、カロテノイド、緑茶などを候補とする研究が蓄積されつつありますので、食事にも気をつけてみましょう。
胃がんと診断を受けても内視鏡切除で根治が得られれば、胃はそのまま残りますので、今まで通りの生活ができます。できる限り内視鏡治療ができる早期がんの状態で発見したいものです。そのためには、ご自身がどれくらい胃がんのリスクがあるかを把握して、適切な間隔で胃カメラを受けていただくことが良いと考えています。ひとつの目安としまして、ペプシノーゲン(PG)法と胃がんの発生率に関するデータが日本から出ています。それによりますと、胃がん発生率は、PG陰性(A群:胃粘膜に萎縮がない方)では0.0016%/年、中等度陽性(B群:中等度萎縮性胃炎の方)では0.142%/年、強陽性(C群:強い萎縮性胃炎の方)では0.295%/年となっています。C群(萎縮性胃炎が強い方)はA群(萎縮性胃炎がない方)に比べて184倍も胃がんの発生率が高いことになります。つまり、萎縮性胃炎と診断された方は、早期にがんを発見するために定期的な内視鏡検査が必要になります。私たちのクリニックでは、胃カメラの時に萎縮境界を判定し、萎縮の程度を所見用紙に記載しています。さらに、その萎縮の程度に応じた適切な検査間隔も診察時にお伝えさせていただいています。
残念ながら「いいえ」です。頻度は少ないものの、ピロリ菌未感染胃から発症するがんは、細胞学的に悪性度が高く(未分化がん、印環細胞がん)、粘膜の下を這うように出現するため発見が遅れる傾向があります。スキルス胃がんと呼ばれ、進行は極めて早く治療に苦渋することがあります。従いまして、ピロリ菌未感染でも、過信せずに定期的に胃カメラをしましょう。